第二回 多汗症対策としての入浴
入浴で自律神経を整える
私は、原発性局所多汗症です。手のひら・足の裏・脇に、季節問わず大量の汗をかき、体が冷えがち。
多汗症は、自律神経の働きと密接に関わっている病気です。(詳しくはこちらの記事をご参照くださいね!)
そこで今回は、自宅でできるセルフケアとして、自律神経のバランスを整える効果のある『入浴』に着目してみました。
そもそも「自律神経」とは、生命活動を維持するための機能(循環・消化・代謝・体温調整など)をコントロールしている神経です。
「自律神経のバランスが整っている」とは、交感神経と副交感神経がバランスよく機能している状態、ということです。
正しく入浴することで、交感神経と副交感神経に働きかけることができるので、自律神経を整える効果があるわけですね。
入浴で交感神経と副交感神経にスイッチを入れることで、正常に汗をかけなくなっていた汗腺を鍛えることができます。これを汗腺トレーニングなどと言います。
結果、いわゆる冷房病、ワキガにお悩みの方にも有効なのです。
なぜ汗腺トレーニングがワキガにも良いのかを説明しだすと、お風呂の話から逸れていってしまうので、こちらの記事をご参照ください!
入浴が多汗症に効くのは、多汗症は自律神経の誤作動※(交感神経の機能亢進)によるので、その自律神経を整えるのは有効だという理由です。
※雑な言い方ですみません!諸説ありますが、未だ多汗症のメカニズムは明らかになっていません。
多汗症は「気のもの」ではなく身体の異常ですので、自力で「治す」ことはできません。
ただ、単純に『良い入浴』は健康増進に繋がるものですし、いくらかは多汗症への効果も望めるのではないでしょうか!?
それくらいの気持ちで『良い入浴』を生活に取り入れていきたいですね!
また、入浴方法は、「多汗症だからこの入り方」と決まっているものではなく、各々の持病や体調などによって、その都度、選ぶべきものです。
普段何気なく入っているお風呂ですが、張るお湯の量や温度で効果が違ってくるので、この記事を参考にしつつ、是非ご自身にあった入浴法を見つけてください。
入浴の基本
まず、基本的な入浴の効果というのは……
体温が上昇し、血液循環が良くなり、代謝が上がり、疲労が回復する
ですね。逆に、代謝が低下し血液循環も悪い状態では、老廃物が溜まって疲労が抜けないわけです。
体温を上げるためと言っても、熱すぎるお湯に浸かると交感神経ばかり刺激してしまいます。健康な方で、朝シャキッと目覚めたい時は良いでしょう。しかし、就寝前は副交感神経が優位になる、ぬるめのお湯が適しています。
お風呂で汗をかき、その汗が蒸発する際の気化熱で体温が下がるまでの全工程が自律神経を整える上で大事です。
また、入浴によって上がった深部体温が下がっていく過程で眠気がきますので、質の良い睡眠も叶います。入眠時間の1-2時間前に入浴するのがオススメです。
冬場はヒートショックに気を付けましょう!
ヒートショックとは、急激な温度変化による血圧の乱高下で引き起こされる各種健康被害のことです。
脱衣所や浴室が寒い=血圧が上がる(血管収縮)
熱いお湯に入る=更に血圧が上がる(急激な熱刺激で一時的に上昇)
入浴中~入浴後=血圧が下がる(血管拡張)
こういう変化が起こるんですね。上がって下がって心筋梗塞、脳梗塞etc……というわけです。
入浴前後の水分補給もお忘れなく!
また、食後低血圧の傾向がある方は食後数時間置いて入浴しましょう。
そうでない方も、消化のため胃腸に集中していた血流を入浴によって全身に流すと、消化不良を起こすことがあるので、最低でも1時間以上経ってから入浴してください。
入浴事故の対応
浴槽でぐったりしている人を発見した際の対応方法について、有益な記事を貼っておきますので、ご覧ください。
入浴による3つの作用
●温熱作用
お湯で身体を温めることで血管が拡張して血流量が増加、温かい血が全身を巡ります。
体温が上昇すると新陳代謝が促され、老廃物や疲労物質が排出されます。
●水圧作用
お湯による圧力で全身の血液が心臓に還ることで、血行が促進されます。
むくみも解消!
●浮力作用
浮力によって関節や筋肉にかかる負荷が減り、緊張がほぐれます。
半身浴と全身浴の違い
全身浴では、前述の温熱作用・水圧作用・浮力作用すべてが働きやすく、短時間で温まることができ、効率よく入浴の効果を得ることができます。
40℃のお湯(これ以上熱いと交感神経が刺激されすぎます)に、10-15分入りましょう。肩まで浸かるので肩凝りにもいいですよ!
循環器系・心機能に問題がある方はご注意ください。
水圧で横隔膜が上方へ押し上げられ心臓の動きが活発化し血流がよくなる一方で、肺や心臓に負担がかかります。
健康な方には全身浴が一番良いとする意見が多く見受けられます。
半身浴は、38-40℃のお湯に、みぞおちまで浸かります。20-30分ほどが目安です。
下半身で滞っていた血液が水圧によって心臓に戻りやすくなり、心臓から送り出される血液の量も増え、足のむくみ解消にも!
全身浴ほど心臓や肺に負担をかけずに済むので、健康不安のある方に向いています。
また、熱すぎないお湯で行うことで、副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます。
半身浴は上半身が寒い問題
冬は入浴前に浴室暖房で浴室内を26-28℃ほどにしておくのがいいそうです。
ただ、浴室暖房がない場合はどうすれば!?
うちはありません!!
浴室暖房乾燥機やミストサウナなどで浴室内を暖房するのが効果的ですが、浴室暖房がない場合には、シャワーを使って、浴室内をあたためると良いでしょう。シャワーフックのなるべく高い位置にシャワーをかけ、浴槽に向けてシャワーから給湯するようにすると、浴槽の湯はりにもなり、お湯もムダになりません。
単純にフタをせずにお湯を溜めるのもアリみたいです。
いずれの場合も、浴室は温まるにしても、肝心の湯の温度はどうなんでしょうね?
あぁ~~浴室暖房ほしいなぁ!!
風呂場のリフォームしたいんですよ……お金がかかることなのでなかなか踏み出せずにいますが、来年あたり検討してみようかな。
と、横道に逸れてしまいました!
半身浴の場合は、肩にタオルをかける、浴槽のフタを半分しめておくなど、上半身とお湯が冷えない工夫が必要です。
湯温計なんかも、あるとよさそうですね。
ちなみにお湯の温度による効果の違いは以下です。
微温浴(ぬるま湯) 37-39℃:副交感神経が働き安らぐ
温浴 39-42℃:一般的な入浴温度
※頻脈・血圧上昇といった注意点もあるので、持病のある方は気を付けましょう。
半身浴でダイエットできるのか問題(新陳代謝と基礎代謝)
入浴そのもので痩せるというよりは、基本になる「健康な身体づくり」の一端を担い、痩せる一助になる、くらいの感覚ですね。多汗症が入浴で治るわけじゃないのと同じで……。
新陳代謝が悪いとエネルギー変換効率も悪くなるので、まぁ痩せにくいだろうな~とは思いますよね。
ところで、ダイエットで重視されるのは「基礎代謝」です。
素人(私)がめちゃくちゃ大雑把に言うと、新陳代謝も基礎代謝も代謝は代謝!
代謝をどの側面から定義するか(分類)の違いだと理解することにしています。
「基礎代謝」はエネルギー代謝のことを言い、カロリーで表現されるもの、と捉えています。
新陳代謝:
(物質代謝)生体内で必要な生活物質が摂取され不用物は排泄される作用。
古いものが新しいものに次々と入れ替わること。
物質 → エネルギー(異化)/エネルギー → 物質(同化)
基礎代謝:
(エネルギー代謝※)覚醒状態の生命活動を維持するために生体で自動的に(生理的に)行われている活動における必要最低限のエネルギーのこと(カロリーで表現される)
※エネルギー代謝:
基礎代謝(呼吸・循環・体温・蠕動運動・筋肉の緊張など)
活動代謝(体を動かすことによってエネルギーを消費)
食事誘導性熱代謝(食事をすることによってエネルギーを消費)
総エネルギー消費量(24時間相当):
基礎代謝量(約60%)・食事誘発性熱産生(約10%)・身体活動量(約30%)の3つで構成される
参考:
身体活動とエネルギー代謝 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
わかりやすいのでWikipediaから一部引用させていただきますね。
代謝と言う用語は、主に物質代謝をさして使用される場合が多いが、物質代謝そのものはエネルギーの代謝によって起きている。またエネルギー代謝も物質の交代によって起きているので、相互に共役していると考える。したがって、物質代謝およびエネルギー代謝を包括して指す言葉として本記事の『代謝』の正確な定義となる。
物質およびエネルギー代謝などの簡単な定義および位置づけは以下の通りである。
物質代謝:物質の変換
- 異化:外部基質の分解反応
- 同化:生体高分子の合成反応
エネルギー代謝:生体活動に関わるエネルギーの出入りや変換および利用
ダイエットで検索すると、あっちで新陳代謝こっちで基礎代謝って感じで混乱しますが、何にしても入浴は『代謝』を高めるのに良いものなので、うまく取り入れるべきですよね!
結論:お風呂に入っただけで多汗症は治らないし痩せないけど、入浴は健康にいい!!
手足高温浴~半身微温浴と組み合わせて~
汗腺機能を高める=自律神経のバランスを整える入浴法です。
多汗症というより、汗のニオイが気になる人にオススメされている入浴法ですね。
汗腺機能を高めてサラサラしたいい汗をかけるようになる、ということです!
発汗は自律神経(交感神経)が司っていて、その自律神経に種々の問題が生じて多汗症の症状が出ているのだから、多汗症患者にも良い入浴方法なはず……!
手足は局所性多汗症に多い発現部位で、そうでなくても脳から遠い手足は汗腺機能が鈍りやすいので、そこの汗腺を刺激し、機能を改善、正常に保つというわけです。
43℃ほどの高温のお湯に10-15分間、肘から先と下半身(膝下)だけ浸します。
浴槽で四つん這いになるか、バスチェアを置いて座り、前かがみになるか、楽な方で行いましょう。
前かがみになるのがしんどい場合は、お風呂のフタの上に洗面器を置いて肘下を漬けるのもOKです。
全身浸かっていないので、のぼせる危険性が低いです。
これは、お湯に浸かっていない箇所から汗が蒸発して体温調整できるためです。
全身浴だと全体がお湯に浸かっているので蒸発させられないんですね!
その後、水を足して37℃ほどで半身浴(みぞおちあたりまで)を10-15分しましょう。
手足高温浴で優位になっていた交感神経を鎮めて、副交感神経に切り替えます。
入浴後、冷房などで一気に体を冷やすと体温調節機能がバグるので、汗が蒸発してゆっくりと体温が下がっていくのを待つのが大事です。
温冷交代浴(交互浴)
温熱作用によって血管を拡張し、水風呂(水シャワー)で収縮することで、血管のポンプ作用を活発化させて健康効果を得る入浴法です。サウナもこの一種ですね。
血行促進→新陳代謝アップ→疲労回復・自律神経を整えるというメカニズムは、普通の入浴と同じです。
どちらかというと現役でスポーツをしている健康な方向きのようで、多汗症にオススメという記事は見つけられなかったです。
まとめ
ここまで、さまざまな入浴方法をご紹介してきました。
このようにまとめられると思います。
全身浴:
健康な人に一番オススメ! 通常は40℃ほどで。それ以上熱いお湯は朝の目覚め用に。
半身浴:
健康不安のある方、リラックスしたい時に! ぬるま湯がオススメ。
手足高温浴:
冷え性・ワキガ・多汗症などにお悩みの方に。手足の汗腺トレーニング!
半身浴と合わせて行うのがオススメ。
温冷交代浴:
かなり健康な、スポーツをされている方などに。
いずれの場合も、ヒートショックに注意し、水分補給などにも気を付けて、適切に行いましょう。
ちなみに、さら湯は肌にあまりよくないので入浴剤を使うのが良いそうで……。
これについては、また改めてお話したいです。今回はこの辺で!!